金の小分けで節税するには精錬分割加工後に売却がおすすめ

金(インゴッド、金地金)は、1kgなどまとまった状態で売却する場合、節税は難しいところです。また、相続税や贈与税も節税対策が難しいため、精錬分割加工を活用して小分けにしながら売却・相続・贈与することをおすすめします。

ただし、金の小分けが具体的にどのような節税メリットに繋がるのか、分かりにくいところです。

ここでは金(インゴッド、金地金)を小分けにした上で、所得税・相続税・贈与税の節税に繋がる仕組みやメリットについて紹介しましょう。

【この記事で分かること】

  1. 金の小分けで所得税を節税
  2. 贈与税の節税効果
  3. 相続税の節税効果

金の小分けで所得税を節税

金地金(インゴッド)を保有している方の中で、これから売却を検討している場合は保有量を確認しましょう。

売却に伴って発生する所得税を節税する場合は、所得項目と控除額・金地金(インゴッド)の売却益に注目です。

金地金にかかる譲渡所得と特別控除

金地金(インゴッド)の売却益にかかる所得は、「譲渡所得」に該当します。そして譲渡所得には、以下の基礎控除が存在します。

  • 譲渡所得:譲渡益が50万円以下の場合、特別控除が発生し確定申告義務もありません。
  • 補足事項:金地金(インゴッド)を含む土地や建物以外(動産)は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計額で計算可能

ちなみに短期譲渡所得とは資産の保有期間「5年以下」、長期譲渡所得とは資産の保有期間「5年を超える」期間で定められています。

また、所得税の計算時は、短期譲渡所得にかかる売却益から控除を行います。

  1. 譲渡益の計算:(短期譲渡所得にかかる総収入-(金地金の取得費用+譲渡にかかった費用))+((長期譲渡所得にかかる総収入-(金地金の取得費用+譲渡にかかった費用))÷2)=譲渡益
  2. 総所得の計算:譲渡益-特別控除=0円になる場合は確定申告不要
  3. 所得控除の計算:譲渡益-控除額=課税所得
  4. 所得税の計算:課税所得×税率=所得税、最終的に支払うべき税金

※1年間に短期・長期譲渡所得どちらの売却益も発生する場合は、短期譲渡所得の特別控除が残っている場合は、長期譲渡所得所得にも控除を適用するルールです。

所得税の控除額および税率は、総所得によって変動する仕組みです。以下の項目で紹介するので、参考にしてみてください。

所得税の税率と控除額

所得税の税率と控除額を以下にまとめました。

総所得 基礎控除額 所得税率
195万円以下 無し 5%
195万円を超えて330万円以下 9万7,500円 10%
330万円を超えて695万円以下 42万7,500円 20%
695万円を超えて900万円以下 63万6,000円 23%
900万円を超えて1,800万円以下 153万6,000円 33%
1,800万円を超えて4,000万円以下 279万6,000円 40%
4,000万円を超える 479万6,000円 45%

金地金を小分けにし課税額を抑える

金地金(インゴッド)が1kgなど、まとまった状態で保有している場合は、そのまま売却することで一定の所得税が発生します。また、所得税は累進課税といい、所得が多い程税率も高くなる仕組みです。

そのため「精錬分割」、つまり小分けすることによって1回ごとの売却益を小さくし、節税することをおすすめします。

金地金(インゴッド)の精錬分割業者が行う分割加工は、一般的に100gを最小単位としています。

1gあたり5,000円以下の場合は、100gへ分割することによって非課税まで目指すことも可能です。

ちなみに2020年1月6日時点の金価格は、1g=5,927円のため非課税は難しいものの、小分けに売却することで所得税の税率を抑えることができるため節税メリットを得られます。

例:精錬分割による売却で節税できるケース(計算を分かりやすくするために取得費用は省略、短期譲渡所得として計算)

  • 1kg約590万円:控除を差し引き適用される税率は20%
  • 1kgの金地金を100gごとに精錬分割:年間に100g分ずつ「約59万円」売却した場合、控除を差し引き5%の税率まで抑えられる。

そして、以下の節税効果を見込めます。

  • 1kg約590万円:所得税99万4,500円(特別控除と所得控除を差し引いた計算)
  • 1kg約590万円の金地金を精錬分割し、年間100gずつ売却した場合:所得税4万5,000円(特別控除と所得控除を差し引いた計算)

金の小分けで贈与税・相続税を節税

続いては、金地金(インゴッド)を相続する方や税全贈与を検討している方に向けて、相続税と贈与税の節税と精錬分割の効果について紹介しましょう。

贈与税の基礎控除は110万円

贈与税は、個人から財産(現金や保険金など)を受け取った場合にかかる税金です。そして、金地金(インゴッド)を生前贈与した場合も、贈与税が発生します。

贈与税の場合には、課税額の他に基礎控除を適用してもらえる仕組みがあります。

  • 贈与税の基礎控除:1月1日~12月31日(1年間)に発生した贈与の合計額に対して、110万円の控除が適用
  • 例:1,000万円の贈与額が発生した場合、1,000万円-110万円=890万円で贈与税を計算

ちなみに贈与税の計算式は以下の通りです。

  1. 贈与額(1)-基礎控除110万円=贈与額(2)
  2. 贈与額(2)-控除額=課税価格
  3. 課税価格×贈与税率=贈与税

贈与税の税率は、所得税と同じく累進課税のため変動します。また、両親または祖父母から20歳以上の息子・娘・孫へ贈与する場合は「特例贈与」と呼ばれる通常とは別の「税率」・「控除額」になる点も押さえておきましょう。

基礎控除を引いた贈与額 一般贈与の税率 一般贈与の控除額 特例贈与の税率 特例贈与の控除額
200万円以下 10% 控除無し 10% 控除無し
200万円を超えて300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円を超えて400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
400万円を超えて600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
600万円を超えて1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,000万円を超えて1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
1,500万円を超えて3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
3,000万円を超えて4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円を超える 55% 400万円 55% 640万円

 

金地金を小分けにすることで基礎控除以内の課税額に抑えられる

お分かりの方もいるかと思いますが、金地金の精錬分割によって100gや200gに小分けした場合、贈与額を基礎控除額以内に抑えることができます。

つまり、110万円以下の贈与額に抑えることができれば、非課税も可能です

例:1kg約590万円の金地金を100g59万円に精錬分割し、毎年100gずつ小分けに贈与すると基礎控除を差し引き贈与税・非課税となる。

ちなみにですが贈与を行う場合は、贈与を受ける方と贈与契約書を締結する必要があります。ですので、事前に贈与を受ける方に金地金(インゴッド)の精錬分割・小分けにして贈与を行う理由を説明した上で行いましょう。

金地金(インゴッド)の取得費用(評価額)については、購入時に受取った領収書や納品書があれば記載されている金額で計上できます。ただし、購入時の領収書あるいは納品書を紛失してしまった場合は、売却益の5%で算出されます

そのため、可能な限り金地金(インゴッド)の購入時に受取った領収書や納品書は、紛失しないよう丁寧に保管しておくことが重要です。

相続税の基礎控除は法定相続人の数によって変わる

相続税は、金地金など財産を保有している方が死亡した場合、遺族へ財産を相続した際にかかる税金のことです。

そして相続税にも基礎控除が定められていますが、所得税や贈与税と違い金額が変動します。なぜなら、相続人の数だけ控除額の上限が変わるためです。

【基礎控除の計算式】

  • 3,000万円+(600万円×法定相続人)=基礎控除

法定相続人とは、民法で定められた相続を受ける権利のある方を指します。また、法定相続人は、以下のように相続順位も決められているのが特徴です。

  1. 配偶者
  2. 子供
  3. 兄弟姉妹

たとえば、配偶者・父親・母親・兄・息子といった場合は、「配偶者・息子・母親・父親・兄」といった順番になります。

相続税の計算方法

相続税の計算は、基礎控除から差し引いた金額を法定相続人で割り、それぞれに相続税を課します。

  1. 遺産相続額-基礎控除=課税額(1)
  2. 課税額(1)を民法に定められた割合に従って、法定相続人ごとに分ける。課税額(2)
  3. それぞれの課税額(2)から控除を差し引き相続税をかける。(基礎控除とは別の控除)
  4. 相続税の計算完了

財産の相続割合については、以下のような法定相続分で分けます。

  • 配偶者と子供が法定相続人:配偶者2分の1、子供2分の1(子供が1人以上の場合はさらに分ける)
  • 配偶者と直系尊属(親や祖父母)が法定相続人:配偶者3分の2、直系尊属3分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹が法定相続人:配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

ちなみに相続税率は課税額によって変わるため、次の項目で紹介する精錬分割による節税対策が役立つケースもあります。

課税額(法定相続分まで分けた後) 税率 控除額
1,000万円以下 10% 控除無し
1,000万円を超えて3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円を超えて5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円を超えて1億円以下 30% 700万円
1億円を超えて2億円以下 40% 1,700万円
2億円を超えて3億円以下 45% 2,700万円
3億円を超えて6億円以下 50% 4,200万円
6億円を超える 55% 7,200万円

金の小分けは効率よく相続するために役立つ

相続税が非課税になるケースは、基礎控除額を超えない金額で相続を行うことです。

  • 非課税:金地金の遺産相続2,000万円、基礎控除4,200万円(法定相続人2人)であれば基礎控除額を超えないため非課税
  • 課税:金地金の遺産相続5,000万円、基礎控除4,200万円(法定相続人2人)の場合、基礎控除額を超えるため課税

ただ、非課税にならない場合は、精錬分割加工で小分けしても相続額が同じであれば、課税額も変わりません。そのため相続税の節税に、精錬分割は直接関係ありません。

しかし、1kgなどまとまった金地金でしか保有しておらず法定相続人が複数存在する場合、金地金をうまく分けて相続するために精錬分割することで、相続額などで揉めるリスクを抑えることができます。

金地金の精錬分割加工は、節税以外の相続対策としてもメリットのある選択肢ですので、相続で不安要素がある方はこの機会に検討をおすすめします。

金の小分けは節税以外にもメリットがある

ここからは、金地金の精錬分割による節税以外のメリットを紹介します。

マイナンバーの提示不要で手続き可能

2016年から始まったマイナンバー制度では、金地金の売却額200万円(税込み)を超える場合に顧客のマイナンバーを業者側が収集し、税務署へ提出しなければいけない義務も定められています。また、マイナンバーだけでなく氏名や住所、取引内容をまとめた支払調書も提出しなければいけません。

【支払調書】

  • マイナンバー
  • 氏名
  • 住所
  • 売却品の種類
  • 重量
  • 数量
  • 支払い金額(売却額)
  • 支払い金額の年月日(売却した日)

このような制度は、政府が金地金の保有者に関する個人情報を収集できるため、プライバシーなどの観点から不安に感じる方もいます。

金地金の精錬分割加工を行えば、小分けに売却することで売却額を小さくでき、マイナンバー・支払調書の提示不要になります。

金の小分けで節税対策できる

金地金(インゴッド)には、売却益にかかる所得税・相続時にかかる相続税・贈与時にかかる贈与税の3種類のいずれかです。そして、精錬分割加工で小分けにした上で売却したり贈与したりすると、所得税率を抑えたり贈与税の非課税枠に抑えることができます。さらに売却額200万円以内であれば、マイナンバー・支払調書の提出不要となります。

親族へ生前贈与する予定の方や相場状況から現金化したいと考えている方は、金地金(インゴッド)の精錬分割加工で小分けにし、節税対策を検討してみるのもおすすめです。

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